この日だけは夕食を早めにすませて、海岸まで歩く。
「足元注意!」とか言いながら、遅れないよう急ぎ足。
道すがら、ドーンという音がもう聞こえてくるよ。
次から次へと夜空に開いては消える大輪の花。
この頃の夏の夜の、湿気をたっぷり含んだ暑さや流れる汗も忘れて、
花火と一つになる瞬間。それは「見る」という行為が、この上なく
シンプルなものとして与えられる瞬間でもある。
花火が終わって皆それぞれに、この小さな町のどこかへと帰っていく。
こんなふつうの夏の楽しみが、これからもずっと、ふつうに続きますように、
と祈る夜。